※以下の記事は2020年に取材した内容となっております。
コンクールへの挑戦と優勝こそ、自らを成長に導くカギだった。
この道に進んで13年経ちますが、特に心に残っているのは「第25回ルクサルド グランプレミオ(2018年)」で優勝したことですね。このコンクールでは、イタリア・ルクサルド社の洋酒を使ってプティガトーとピエスモンテを製作するのですが、製作時間が短く、シェフの間でも一番大変だと言われていて。ただ、4度目の挑戦だった私は必ず優勝する意気込みで挑みました。「人と違うものをつくらないと勝てない」と考える中、シェフからの「誰が見ても分かりやすく、かつストーリー性があって想像をかき立てるものをつくりなさい」というアドバイスは印象的でしたね。たとえばケーキを見た瞬間に「これは馬が走っている」とか、「お城の屋根だ」とか、何を表現しているかが分かる。そして、単に綺麗な飾りだったり簡単なデザインで終わるのではなく、これ以上は出来ないというレベルまで完成度を上げて全体のストーリーを描く。シェフからの言葉を胸に、締切間際まで粘って優勝したときは本当に嬉しかったです。プロとして成長するためには、実務だけでなく自らコンクールに挑戦する。そうした個人の技術を磨くための努力が必要だと改めて感じましたね。
努力と実力、そしてケーキへの想いが、自分の一番の味方になる。
一時期はコンクールなどでも強いフランス人の発想力を学ぶため、現地で働いたこともありました。最初は厳しくされることも多かったのですが、もともと負けず嫌いなので、努力と実力を示すことで徐々に信用を得られましたね。思えば学生時代、先生へ「やりたい!」と言えば色々なことに挑戦出来る環境だったので、そこで培った好奇心も活きていたと思います。もし少しでも海外に興味があるなら一度行ってみて、本場の伝統菓子などに触れながら、日本と海外どちらで働くか決めるのも良いかもしれません。働く場所がどこであれ、好きなことを仕事にすれば追求し続けられます。そしてその好きという想いが、この業界で突き進むための一番の味方になってくれますよ。